ひとりと一匹の家族の日常

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猫飼いの朝は早い。早朝4時前。彼女は飼い主の書棚から書類を引っ張り出して鋭利な牙で噛みちぎる。そのガサゴソという音で仕方なしに飼い主の女がのっそりと起きてくる。

まずは投薬の時間だ。彼女(小雪)は元来体が弱く胃腸を悪くしやすい。飼い主に無理やり口を開けられて3種類の薬を慣れた手付きで放り込まれる。これを飲み込めば朝食が待っているので、小雪はゴロゴロとご機嫌に喉を鳴らす。小雪は元々足が悪いので、体重により負担がかからないよう、徹底した食事管理をされている。食事は療養食、量もスケールで図って1食分ぴったり20gを与えられる。

朝食が終わると飼い主は再びベッドに潜り込む。そうして小雪も食べ終えるとケージの中に設置されているホットカーペットの上か、飼い主のお腹の上ですやすやと惰眠を貪り始めるのだ。このとき、飼い主は少し苦しそうに寝返りをうつ。

8時から9時にかけて飼い主が起きてくる。顔を洗って顔に白いフェイスマスクを付けたまま、小雪のトイレ掃除や飲み水の交換が行われる。その後飼い主はパソコンに向かったり、オンライン会議に出席していたり(そのときはおおいに邪魔をしてカメラに写り込んだりする)、時には支度をして何やら玄関の扉の向こうに出ていき、5〜6時間帰ってこない日もある。     

昼はひたすら寝て過ごしたり、外からカラスの声が聞こえれば様子を見に窓辺に移動する。パソコンに向かっている飼い主の膝の上で喉をゴロゴロ鳴らしていることもある。   

17時。また薬と食事の時間がやってきた。小雪の腹時計は正確だ。16時半から部屋の中をうろつき始め、にゃあにゃあと鳴いてみたりする。あまりにもうるさいとき、飼い主は折れて17時前に投薬と食事が与える。    

夜、飼い主は風呂に入る。さっきまでいた仕事部屋からいなくなってしまった。急に不安になり、小雪は「ニャーン」と大声で鳴いた。すると風呂場から全身ずぶ濡れになった飼い主がひょっこり顔を出して「ここだよ」と言う。濡れるのが苦手な小雪は飼い主のその行動に引きつつも安心し、また暇つぶしに爪を問いだり、飼い主の匂いの染み付いたベッドで横になりつつ毛づくろいをしたりして飼い主を待つ。風呂から戻ってきた飼い主はやたら独特な匂いがする。シャボンの匂いというものであろうか。

やがて夜が更けゆく頃、飼い主は部屋の電気を消してベッドに入る。小雪も同じベッドに入る。飼い主のことをママと呼びたくなり、甘えて飼い主の首元にマフラーのように巻き付く。飼い主は苦しそうにしているが小雪には関係ない。飼い主はしばしスマホをいじっていたが、スマホの画面をひっくり返し、本格的に眠る体制に入った。そしてまた、一人と一匹の家族の生活が繰り返されていくのである。

文・姫野桂

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