2020年、家族が“拡張”した

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家族について書くとき、一番に浮かぶのは母のことだ。

私が生まれてから、結婚して家を出るまでの30年を一緒に過ごした人で、一人っ子だった私の母であり、また姉のようでもあり、友のようでもあった人。

父もまた、私の家族だ。ちょっとクセの強いおじさんで、お酒が大好きで鷹揚で、子どもが好き。友達も多いけど、お酒絡みでよくトラブルを起こした。私が20歳になる年に彼は母と離婚し、別世帯の人になった。

今回「コロナ禍」というテーマで書くとなったときに、どちらとの関係について書こうか悩んだ。

私の出身地は大阪で、母は私と住んでいたアパートを引き払って自分の両親(私の祖父母)と同居をしている。

「コロナにかかったら全員アウトやわ」と笑いながらも、妊娠中の私のもとへ一度遊びに来てくれ、産後も数回、「孫くん見に来たよ」と東京へ来てくれた。

私の結婚直前から急激に関係が悪化し、ほとんど連絡をとることのなかった父。どこに住んでいるのかも、何の仕事をしているのかも知らない。連絡が来ると緊張とストレスで脈拍が増えるので、こちらからは連絡をとらない。

そんな父から「コロナに気をつけて」とLINEが来るようになった。私も「飲み歩きを控えて」と返信した。それから、私に子どもが生まれたことで少しやりとりは増え、出産のお祝いも送ってくれた。電話は相変わらず緊張するけれど、ギスギスしたやりとりはなくなったように思う。

さて、どちらとのことを書こう。

いやいや、待て待て。

私には、もう一つ家族があるのだ。

3月に妊娠。感染対策を行いながらの妊婦生活、そして出産

2020年の3月に初めての妊娠をした。

世は新型コロナウイルスの感染拡大期。ほどなくして緊急事態宣言が出るが、妊娠がわかった頃にはまだ「昔流行ったSARSくらいのもので、すぐに収束するだろうな」と甘く考えていた。

2016年に結婚した私の夫は妊娠を喜んでくれ、まだ早いというのに実家にも私の妊娠を知らせ、まだ豆粒のような黒い点しか映っていない我が子(予定)のエコー写真をいそいそと送信していた。

コロナ禍での出産は大変だったでしょう、と、会う人会う人に言われる。

実際に大変だったかどうかはわからない。通常期との主な違いはたぶん「マスク着用を強制されること」「立会出産と面会ができないこと」「里帰り出産ができないかもしれないこと」「万が一感染したら、希望通りに出産ができないおそれがあること」で、多くの妊婦が恐れていたのは2番目の「立会も面会もできないこと」と、3番目の「里帰り出産ができないかもしれないこと」だった。

私は幸い「立会出産は絶対に拒否」勢で、夫もまた「無理に立ち会いたくはない」という人だったし、祖父母と暮らす母のもとへ里帰りしても全員が大変なだけで何のメリットもないだろうと判断したので、私たちは何も悩むことなく妊娠生活を謳歌し、出産に臨んだ。

分娩に備えて待機する「分娩予備室」という個室で分娩用の衣服に着替えながら「なるほど、ここに普通は旦那さんがいるわけか」と思い、分娩室でいきみながら「この手術室みたいな空間に、普通は旦那さんがいるわけか」となんだか違和感を覚えるなどした。

陣痛中は夫とLINEでやりとりをし、また仕事中の母からも合間を見てLINEが届いた。

無痛分娩のため、麻酔をしていて比較的余裕のある私は、ツイッターで実況をしつつ夫と母それぞれに状況を伝えていた。

このときのLINEを見返してみると、私がいつも先に連絡をしていたのは夫だった。

そりゃまぁ、私が産んだのはまぎれもない夫の子なのだから、夫に一番に知らせるのは当然なのだろう。

でも、なんとなく、私は自分が夫を「より優先したい」と思うようになったのかもしれない、とこのときに感じた。

「家族」の認識が、拡張した

母は、いつまでも私の母だ。

それは母と私には血縁があり、私を産んだのが母だから。揺らぐことなく、母は私の家族であり、圧倒的に“母親”だ。

一方で、夫と私には血縁がない。家族になってから、まだ4年しか経っていない。しかもこの家族は血縁によって結ばれたものではなくて、お互いがお互いを選択して、自分たちの意志で作ったつながりなのだ。

それもまた家族と呼ばれることに、私はついさっき気づいた気がするのだ。

そう思うと、今日まで私は、夫を家族として認識していなかった気さえする。

今日、家族について書こうと思っていて「おかんのことにしよかな、おとんのことにしよかな」と悩んだときに「っていうか、夫くんも家族やな」と初めて感じたのだ(夫、ごめん)。

これまで私には、血縁者の家族だけがいた。

今は、血縁者でない家族が一人いて、そして血縁のある小さな家族も一人増えた。

2020年。そのほとんどを一緒に過ごした家族。私のお腹の中ですくすくと成長し、外の世界に出てきた家族。

私にとっての「家族」というものが、すこし広がった感覚がした。

ある日突然、かちりと音がして切り替わったわけではないけれど、母や父、夫に息子。「あぁ、この人たちがいまの私の家族なのだな」と感じさせてもらった気がする、そんなコロナ禍の1年だった。

文・藤堂真衣

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