愛しい、愛しい、私の家族
「ただいま」。夫は、毎日仕事から帰宅をすると、玄関で服を脱いで、全裸に近い格好になる。それから、進撃の巨人の真似をしながら部屋を横断し、手洗い・うがいをして、お風呂に入る。私と娘はそんな夫を見て笑う。
私は、新型コロナウイルスが世の中に広まる前からステイホーム状態だった。筋痛性脳脊髄炎という、治療法がない病気にかかり早2年になる。24時間365日、痛みやだるさがあり、もちろん免疫力も少ない。一人で出かけることもできないのでいつも家で時間を過ごしている。
コロナがじわじわと人々の心と身体に暗い影を落とし始めたとき、小6の娘が「母ちゃんのためにも、家族でもっと協力しあいましょう!」と、週一の家族会議で提案してくれた。とてもしっかりしている、でも可愛らしい娘の提案に嬉しくなった。
私が病気になってから買い物はすべて夫がしている。買ってきたものはいつも、夫と娘が丁寧に消毒をしてくれる。そんなとき、何もできない私は申し訳なさでいっぱいになる。でも、娘は「全然! みんな元気でいて欲しいし、母ちゃんにはこれ以上痛い思いも辛い思いもしてほしくないんだもん」と言ってくれる。娘の言葉に夫も笑顔でうなずく。
もともと会話の多い家族だった。コロナの影響で、家で一緒に過ごす時間が増えて、お互いに交わす言葉はさらに増えた。「お出かけしなくても、こうやって家族みんなで過ごせるだけで幸せだよ」。娘や夫の言葉に胸が熱くなった。
今まで出かけていた時間は、お互いの夢や目標を再認識し「頑張ろう!」と応援し合う時間になった。部屋の掃除をしたり、夫が新しい料理を作ってくれたりすることも増えた。外の風を感じられるようにと、たまにドライブに連れて行ってくれるときは、車の中でみんなでカラオケを楽しむこともある。ステイホームで、笑いあう時間がどんどん増えていった。互いに「ありがとう」「大好き」を伝える回数も多くなった。
私はこの家族がとても愛しい。縁があって家族になった私たち。泣いたり、笑ったり、ケンカしたり、たくさんのストーリーに満ちあふれている。家庭内に笑顔があふれ、優しい気持ちが充電されれば、外の世界へも優しい気持ちの連鎖が広がる、と私は思っている。一番近くにいて一緒に多くの時間を過ごす家族にこそ、毎日感謝と尊敬をもって接していたい。
今日も夫が面白いことをして、私や娘を笑いでいっぱいに満たしてくれる。「笑うとね、免疫力あがるから」。ニコッと笑う夫のことを、大好きだなー! と、結婚23年目の夜にしみじみ思った。
どこにいてもどんなことが起きても「幸せ」だと自分が思えば、世界一幸せな気分になれる。これからも、家族と過ごすかけがえのない日々を大切に過ごしていきたい。
文・横山小寿々