妹へ。私が生きる理由はあなたです

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私には4歳離れた妹がいる。大好きで愛おしい、大切な妹。これは、そんな妹へ贈る手紙だ。

***

妹へ

あなたが生まれた頃、私はまだ4歳だった。4歳の私から見てもあなたは本当に可愛くて、大事にしたいと心から思えた。

思い返せば、あなたは昔からみんなから愛される子だったよね。勉強もできて、心優しくて、頭の回転が早くて、面白くて、ピアノが誰よりも上手で。そんなあなたは自慢の妹だった。

それなのに、どうしてだろう。愛される理由をたくさん持つあなたは、理不尽な理由で親から暴力を受けることがあった。そして、当然のように私も。

理解し難い親の態度に、幼い頃から一緒に苦しんできたけれど、これでもあなたのことはできるだけ守ろうとしたの。親に傷つけられて泣いてばかりのあなたを何度も抱きしめた。必死に親をなだめたり、時には代わりに殴られたりすることも。

私が傷つくよりも、あなたがその標的にされる方が嫌だった。親のせいでボロボロになるのは私ひとりで十分。

正直、親から暴力を受けるたびに何度も死にたいと思ったよ。こんな人生、価値なんてないと思っていた。それでも生き続けていたのは、あなたを守り続けたかったから。私には、ちゃんと生きる動機があった。

でも、私はあなたをずっと守りきることができなかった。

社会人1年目の夏、私は親との関係に耐えられなくて実家を出てしまった。あなたを一人、実家に残して。私は、あなたを守ることよりも自分を守ることを選んでしまった。

このまま実家にいたら死んでしまいそうで、あなたに「一緒に暮らす?」と提案することすらできなかった。表向きには「自分が壊れてしまっては、あなたを守ることができないから家を出る」と伝えたけれど、本当の本当は自分だけを守った最低なヤツだよね。

私は実家を出てからずっと考えていた、あなたの姉をちゃんとやれていたのか?って。あなたを守れていた?あなたの姉が私でよかった……?

ずっと、そう聞きたかった。

今年の夏、実家を出てからちょうど2年が経とうとしていた。

親と離れて精神が正常に戻った私は、再び実家で暮らそうと考えた。すべては、あなたをまた守るために。2年前はあなたを置いていってしまったけれど、今回はうまくやれるって信じていた。

それなのに。

実家に戻るために親と再び連絡を取るようになって、私は過去のトラウマに激しく苛まれた。溢れ出る涙、壮絶な記憶、心と体を蝕むような痛み……。

もう、私は大丈夫だと思っていたのに、過去を乗り越えたと思っていたのに、全然大丈夫じゃなかった。過去の記憶は今もずっと私の中に生きていたようだ。親と連絡を取れば取るほど、自分が壊れていくのを感じ、過度なストレスで血を吐いた。ストレスによる胃潰瘍だった。

あなたはすぐに私の家まで駆けつけてくれたよね。そこであなたが言った言葉を私は忘れない。

「私のことはいいから自分のことだけを考えて。お姉ちゃんは、お姉ちゃんの人生を生きて」

「私、お姉ちゃんの妹でよかったよ。じゃなかったら死んでたと思う」

私がずっと聞きたかったことをあなたは教えてくれた。2年前にあなたを実家に置いていった罪悪感をあなたは軽くしてくれた。ありがとう、本当にありがとう。

私こそ、あなたの姉でよかった。あなたが妹だから、私は生きていける。私に生き続ける理由を与えてくれてありがとう。あなたは、いつまでも私の大切な妹だよ。

姉より

文・梶原よんり

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